法人設立手続き
台湾の事業形態と法人の設立手続きについて
日本企業が台湾に拠点を構えてビジネスを行う場合、どのような形態で進出するかが重要となります。形態によって、法務面や税務面での扱いが大きく変わってきます。ですので、どんな形態を選択するかを慎重に決めなければなりません。
台湾に進出する事業形態の例としては現地法人(FIA法人)・支店・代表者事務所など様々なものがあります。現地法人とは、日本の本社とは別の独立した海外法人のこと。日本の親会社の責任は出資金に限定されるので、何かトラブルがあって訴訟が起きた場合、原則として親会社に責任を求められることはありません。
現地法人(FIA法人)
外国法人または個人で投資し、設立された現地法人のこと。FIAはForeign Investment Approvalの略。 設立には、經濟部投資審議司(日本でいう経済産業省)の許可が必要です。ただし「華僑・外国人投資のネガティブ・リスト」の「禁止事業」「制限事業」にあたる業種は認可されず、「制限事業」に該当する場合は、中央目的事業主務機関の許可を得なければなりません。
現地法人(FIA法人)のメリット
- 台湾で得た利益を本国に外貨送金できる
- 外国資本の持株比率、外国人株主数、外国籍者代表取締役及び監査役等の国籍及び居住地の制限が除外
- 外国資本額が資本総額の45%以上を占めた場合、開業20年以内の期間継続してその投資額を維持していれば、政府による収用または買収には適用されない
- 外国資本額が資本総額の45%以上を占めた場合、会社法第267条(新株発行を行った際に、一定比率 (10%~15%)の株式を留保して、従業員に引き受けさせる規定)が除外される。※上記は陸資を除く外資に対する規定となります。陸資(中国からの投資)の場合は、別段の定めがある為、上記規定は適用されません。
現地法人(FIA法人)設立に必要な書類
法人投資(株式会社形態)の場合
- 法人株主の登記簿謄本(コピー)1部
- 法人株主のFIA申請手続委任状(台湾で申請手続する代理人用)(正本)1部
※公証人の認証要 - 外資資格声明書(正本)1部
※中国の法人・人民及び団体等による申請人への直接及び間接の出資額が30%を上回っていないこと、或いは、実際に重要な影響を与えることができないことを証明する文書。 - 発起人名簿(コピー)1部
- 法人株主の代表者任命書(コピー)1部
- 株主総会(取締役会)議事録(コピー)1部
- 新設法人の各役員のパスポート(コピー)
- 新設法人の代表取締役(董事長)、取締役(董事)、監査役(監査人)就任同意書(コピー、中国語書式)各1部
- 新設法人の定款(コピー)1部
- 登記住所として使用する事務所の賃貸契約書または建物の登記簿謄本(コピー)1部
- 登記住所として使用する事務所の建物税金(房屋税)の直近年度分納付証明書または建物の登記簿謄本(コピー)1部
- 公認会計士による資本金のチェック証明書(正本)1部
法人投資(有限会社形態)の場合
- 法人株主の登記簿謄本(コピー)1部
- 法人株主のFIA申請手続委任状(台湾で申請手続する代理人用)(正本)1部
※公証人の認証要 - 外資資格声明書(正本)1部
※中国の法人・人民及び団体等による申請人への直接及び間接の出資額が30%を上回っていないこと、或いは、実際に重要な影響を与えることができないことを証明する文書。 - 法人株主の代表者任命書(コピー)1部
- 株主同意書(コピー)1部
- 代表取締役(董事長)の選任に係る取締役(董事)同意書(代表取締役がいない場合は不要)
- 新設法人の各役員のパスポート(コピー)
- 新設法人の代表取締役(董事長)、取締役(董事)就任同意書(コピー、中国語書式)1部
- 新設法人の定款(コピー)1部
- 登記住所として使用する事務所の賃貸契約書または建物所有者の同意書(コピー)1部
- 登記住所として使用する事務所の建物税金(房屋税)の直近年度分納付証明書または建物の登記簿謄本(コピー)1部
- 公認会計士による資本金のチェック証明書(正本)1部
※各書類が繁体字中国語以外の外国語の場合は中国語訳の書類も添付。
※公証人の認証は、日本の公証役場(公証人)にて、商務認証は日本にある台湾在外公館(台北駐日経済文化代表処)での取得が必要。
※個人投資の場合は必要書類が異なりますので、別途ご相談下さい。
現地法人の申請から設立までのスケジュール
1 | 約3営業日 | 台湾法人会社名称と営業項目の予備審査(経済部工商輔導中心) |
---|---|---|
2 | 日本での所要日数 | FIA投資申請に必要な書類作成と認証手続き |
3 | 約5営業日 | 經濟部投資審議司へのFIA申請書の作成と提出 |
4 | 約10営業日 | 經濟部投資審議司から投資認可公文書の取得(投資額15億台湾ドル以下の場合) |
5 | 5~10営業日 | 日本から台湾へ資本金振込みのための準備口座の開設(※所要期間は金融機関により異なる場合があります) |
6 | 1~2営業日 | 資本金送金(※所要期間は金融機関により異なる場合があります) |
7 | 5~7営業日 | 經濟部投資審議司による出資金の査定 |
8 | 当日 | 会社設立登記の許可(投資額5億台湾ドル未満、且つ会社の所在地が台北市内の場合) |
9 | 約10営業日 | 所轄税務署での税籍登記 |
10 | 1~2営業日 | 英文社名の審査と輸出入商の申請(国際貿易局) |
11 | 5~10営業日 | 準備口座から正式口座への切替手続き(※金融機関により異なる場合があります) |
12 | 約1営業日 | 会社代表者及び株主情報申告(登録) |
留意事項
- 製造業は工場環境評価(工業団地入居)申請や工場ライセンス取得が必要のため、申請手続きや操業までの期間が上記スケジュールより長くなります。また工業団地によって入居申請の手続きが異なります。
- 特別な営業許可が必要な場合(例:医療関係、旅行会社、運輸会社など)は、別途審査を受け、登記条件を確認しなければなりませんので、必要書類や手続きの所要日数が異なります。
- 会社名称と営業項目の予備調査は、経済部工商輔導中心が規定するウェブサイトにて、使用したい会社名称(漢字のみ)と営業項目を記入し、オンライン申請を行います。営業項目の適否および会社名称に重複がないかをチェックすることが目的です。この手続きは、日本での書類準備と並行して進めることが可能です。会社名称が他社と重複している場合には、再度申請しなければなりません。予備審査通過後に資本金振込みを行う銀行の準備口座を開設することができます(金融機関によっては手順が異なる場合があります)。
日本法人の台湾支店
台湾で営業活動をする際、支店を設立する選択肢もあります。支店の場合、原則として本店の営業範囲内で活動する事が多いですが、本店と異なる営業活動(営業項目)を登記しても(行っても)構いません。但し、法律上、支店は本店と同一法人扱いとなります。
支店設立の必要書類
- 会社登記簿謄本(コピー)1部
- 本社の定款(コピー)1部※口座開設時に必要 ※地場銀行を開設される場合、本社の定款に公・認証を求められる場合がある 。
- 中華民国(台湾)に於ける責任者および台湾支店に於ける経理人への授権書(正本)各1部 ※主務機関の審査時の判断により、授権書に公・認証を求められる場合がある。
- 本社の取締役、監査役全員の氏名、役職、国籍、住所リスト1部
- 新設支店の責任者および経理人のパスポート(コピー)1部
- 支店登記住所として使用する事務所の賃貸契約書または建物所有者の同意書(コピー)1部
- 支店登記住所として使用する事務所の建物税金(房屋税)の直近年度分納付証明書または建物の登記簿謄本(コピー)1部
- 公認会計士による運営資金チェック証明書(正本)1部
支店の申請から設立までのスケジュール
1 | 約3営業日 | 支店名称と営業項目の予備審査(経済部工商輔導中心) |
---|---|---|
2 | 5~8営業日 | 外国会社支店設立の認可申請(経済部商業司) |
3 | 5~10営業日 | 本国(本社)から台湾へ運営資金振込のための準備口座開設(所要期間は金融機関により異なる場合があります) |
4 | 1~2営業日 | 運営資金送金(所要期間は金融機関により異なる場合があります) |
5 | 5~8営業日 | 運営資金の査定及び支店設立登記申請書の提出(経済部商業発展署) |
6 | 約10営業日 | 税務署での税籍登記 |
7 | 1~2営業日 | 英文社名の審査と輸出入商の申請(国際貿易局) |
8 | 5~10営業日 | 準備口座から正式口座への切替手続き(※金融機関により手順が異なる場合があります) |
留意事項
- 支店形態での投資は、陸資(中国投資者)に該当しない場合、投資審議司の許可は必要ありません。
- 但し、投資許可を受ける必要はありませんが、FIAでの支店投資に於ける保障および処理については FIA法人と同じ扱いとなります。(保障や処理の内容は外国人投資条例の規定が適用されます。 詳しくご確認されたい場合は弊社まで別途ご連絡願います。)
- 台湾支店の設立は台湾の会社法で次の要件が規定されています。
- 外国で既に会社が設立されており、営業を行っていること。
- 本店の定款の制約を受けますが、事業年度は本店と別に定めることができます。
- 他社への出資は不可となります。
- 支店の運営資金は本国より送金が必要です。
- ネガティブ・リストに基づき、業種によっては制限を受けたり、要件設定がある場合があります。
- 台湾支店の所得は本店の所得に合算します。但し、台湾支店に課税される法人税は日本の法人税および住民税の控除対象となります。
- 台湾支店の傘下に更に支店を設置することはできません。本店の傘下に並列で複数の支店が帰属する形となります。
- 台湾支店は法律上、本店と同一法人のため、支店の法律行為の責任が本店に直接及ぶことになります。
代表者事務所(台湾の駐在員事務所)
台湾の駐在員事務所は正式には代表者事務所(Representative Office)と呼びます。代表者事務所は営利を目的とする業務をせず、あくまで本店の補助的な業務を行うだけの場合は、法人税は免除されます。また設立手続きが簡単なことも特徴です。
代表者事務所が行える活動には、市場調査、取引先や代理店、合弁先などの連絡業務、本店のための契約締結、商談、入札などです。 また、代表者事務所は台湾に代表者を登録しているので、本店の訴訟代理人としての役割も担うことができ、台湾で本店業務のための営業行為ではない法律行為をすることができます。その他、日本人駐在員の就労/居留ビザ、居留証の取得が可能で、台湾で就労することができます。台湾人の雇用や各保険の加入も可能です。代表者事務所は、会社法に規定されており、台湾で営業はしないものの、代表者を派遣して「業務上の法律行為」をする際は、中央主務機関である経済部商業発展署に必要事項を届出します。代表者事務所の設立時には事務所住所(登記住所)を届出なければなりません。尚、経済部商業発展署が規定している「業務上の法律行為」とは、契約、オファー、入札、買付市場調査となっていますが、一般的には、本店のために、台湾内の第三者との調達契約や協定の交渉・締結、訴訟・非訴訟、競争入札での入札なども含まれます。しかし、これらの行為の一部分は、営業行為とみなされるケースもあるので注意が必要です。
駐在員事務所設置の必要書類
- 登記簿謄本(コピー)1部
- 台湾の代表者(駐在責任者)への授権書(正本)1部
- 台湾で税籍登記手続きを行う代理人への委任状(正本)1部
- 台湾の代表者(駐在責任者)のパスポート(コピー)1部
- 事務所の賃貸契約書1部(コピー)
- 登記住所(事務所)の建物税(房屋税)の直近年度分納付証明書(コピー)1部
設立(登記)完了までの期間
申請~設立(登記)完了まで約2週間
留意事項
営業外の収入(賠償金など)がない限り、法人税の課税はありません。
営業活動は行えない基本的に収入は発生しませんが、経費は発生するため、法令上、簡単な帳簿の備置が必要となります。
営業税5%の課税はありません。税法上、統一発票の発行および営業税の申告も不要ですが、営業税の還付制度はありません。
駐在員事務所も従業員を雇用することができますが、台湾労働基準法及び労働事件法が適用されます。
労工保険は、駐在員事務所の従業員が5人未満の場合、加入は任意です。
全民健康保険は、駐在員が居留証を取得している場合、加入が必要です。
台湾政府発行の労働許可がなければ、外国籍の駐在員は台湾で就労することができません。
許認可申請
-
工作許可、(労働許可)、居留証等の申請手続き代行
労働部労働力発展署や内政部移民署での申請手続きを代行します。 関連書類の作成、web等での進捗状況の確認や政府法令のupdate管理を行います。
-
食品、化粧品、医薬品等の薬事申請手続き代行
衛生福利部食品薬物管理署への申請手続きや情報収集(問い合わせ)等を行います。 実際の申請業務は提携先に依頼します。
-
商標登録、実用新案等の申請手続き代行
経済部知慧財産局への申請手続きや情報収集(問い合わせ)等を行います。
実際の申請業務は提携先の「商標事務所」や「専利師(専利事務所)」に依頼します。